遺伝子検査でわかる7つの事|発病・疾患リスク・性格までわかると噂の信憑性とは

遺伝子検査が自宅でも簡単にできるのをご存知でしょうか。遺伝子を見ることで糖尿病や高血圧、心臓病などの疾患リスクやご自分の体質が分かります。

あらかじめなりやすい疾患を知ることができるので、健康管理ツールとして非常に優秀です。

遺伝子検査キットを販売している大手「Gene Life」によれば、様々な病気のかかりやすさや親から子への遺伝部分、自分はどんな体質で、将来どんな病気にかかりやすいのかの差がわかるようになると言っており、提供するキットで判別できる項目例として、下記をあげています。

 

[jin-fusen2 text="検査でわかることの例"]

疾患系 発症リスク判定
2型糖尿病 心筋梗塞 脳梗塞 群発頭痛 LDLコレステロール 不眠症 アトピー性皮膚炎 十二指腸潰瘍 ニコチン依存症 など

特徴系 傾向判定
疲労 長寿・寿命 身長 髪の太さ 眼の色 アルコール代謝 情報処理速度 計算速度 記憶力 など

その他 体質判定
ビタミン濃度 速筋・遅筋傾向 甘味感知度

参考:遺伝子検査でわかること

そこで今回は、遺伝子検査で分かることや信頼性、そして検査するデメリットや費用相場などを詳しくご紹介します。

目次

遺伝子検査は何を調べているの?検査項目は3種類に大別される

日本医師会が公表している「かかりつけ医として知っておきたい遺伝子検査、遺伝学的検査Q&A」という医師向けの資料によれば、遺伝子を調べる対象は

  1. 生殖細胞系列、体細胞、および病原体に含まれる遺伝情報
  2. 体細胞変異
  3. 病原体遺伝子検査

の3つに大別されるとしています。

生殖細胞系列変異

個体を形成するすべての細胞に共通して存在し、遺伝情報として子孫に伝えられ得る変異であり生涯変化することはなく、この変異を明らかにするためには、通常、血液中の細胞が用いられますが、口腔粘膜や、皮膚線維芽細胞、毛髪、爪、唾液など、

人体を構成するどの細胞を用いても検査することが可能なんだそうです。後述の『唾液で検査するのは信憑性あるの?』という項目でも触れますが、唾液でも検査自体は十分に可能です。

体細胞変異

受精後もしくは出生後に、後天的に獲得される遺伝子変異であり、原則として次世代に受け継がれることはありません。がん細胞にみられる遺伝子変異のほとんどが体細胞変異です。

つまりガンになるかたのほとんどは遺伝ではなく、別の原因があるということになります。遺伝子検査では、遺伝的にガンになる可能性を探していると言えそうですね。

病原体遺伝子検査

人に感染症を引き起こす外来病原体(細菌、真菌、ウイルスなど)の核酸を検出・解析する検査であり、感染の疑われる様々な臨床検体(血清やその他の体液、組織など)を用いて、病原体の存在の有無を解析します。

これがいわゆる疾患や、潜在的に保菌しているウィルスの有無を調べて、将来の病気の有無を調べる要素なんだと思われます。

 

遺伝子検査でわかることは約280項目の疾患と体質

テクノロジーを活用して医療を支える技術のことをヘルステックと呼びます。遺伝子検査もヘルステックの1つです。遺伝子検査をすると約300項目の解析を行えることから、自分でも知らなかったようなさまざまな体の情報を得られます。

胎児との親子関係を調べるために遺伝子検査をするといったものはよく聞く話です。では具体的にどのような情報がわかるのでしょうか。ここではとくに注目したい7つのことを紹介します。

約40種のガンの疾患リスク

遺伝子検査では驚くほどたくさんの疾患リスクが分かります。一般的に知られている疾患は、ほとんど検査できるのではないでしょうか。たとえば大腸がんや胃がん、食道がんや乳がんなどのがん全般。心筋梗塞や高血圧、冠動脈疾患や脳卒中などの循環器疾患。他にも喘息や偏頭痛などあらゆる疾患のリスクが検査で分かります。

検査項目の一覧

約40種のがん、約20種の生活習慣病など全部で150種の疾患、見た目の特徴や食習慣など全部で130種の体質の特徴について、最大で280項目の疾患・体質について検査が出来ます。

参考:検査項目の一覧 | 遺伝子検査・DNA検査のMYCODE(マイコード)

それぞれの疾患が普通の人と比べるとどれくらいリスクが高いのかを「1.83倍」「1.34倍」のように数字で示してくれることが特徴です。遺伝子検査キットの種類によっては、リスクを示すだけではなく、疾患を発症しないための生活習慣や摂りたい栄養素などのアドバイスも教えてくれます。

体型や体格

身長は高くなりやすいのか、肥満になりやすいのかなど体型や体格も分かります。「あなたの遺伝子は、BMIが低い傾向の方が多い」のように書かれていることが多いです。他にウエストとヒップ比や体脂肪率、内臓脂肪、頭の大きさなども分かります。遺伝子だけでここまでさまざまな情報が分かるのかと驚きです。

自分の体質が分かるので、「遺伝子的に太りやすいらしいから、食生活には気をつけないと」のように対策も立てやすくなるでしょう。

血液や免疫系の特徴

赤血球や血小板の数なども遺伝子によって決まることから、遺伝子検査で傾向を調べられます。血液に関することなら何でも検査が可能です。血液の止まりやすさやコレステロール値なども分かります。

血液が止まりやすいかどうかはとくに手術をするときに重要になるので、知っておいても損はないでしょう。血糖値の上がりやすさやインスリン濃度も分かりますので、糖尿病対策にも生かせます。

アレルギー体質

アレルギーを発症する人としない人の違いも実は遺伝子である程度は決まっています。スギ花粉症やアレルギー性鼻炎、金属アレルギーなどのなりやすさが検査可能です。まだ花粉症を発症していないのにリスクが高いと判断されたら「これから花粉症になるかもしれない」と心構えができるでしょう。

また自分が知らなかったアレルギーを知ることで、うっかりアレルギー症状を起こして体調を崩すことも避けられます。

睡眠の傾向

早起きしたいのになかなか起きられない。いわゆる夜型の人は、遺伝子で夜型傾向があるかどうかが決まっていると言われています。そのため遺伝子を見て夜型傾向があるかどうかを調べることも可能です。早起きが苦手なのは遺伝子のせいだったと分かると、気が楽になる方もいるのではないでしょうか。

他に睡眠時間の長さや過眠症の傾向があるかなども分かります。ショートスリーパーになって自分の時間を増やすために睡眠時間を削ろうとする方もいますが、必要な睡眠時間は人それぞれ決まっているものです。自分の睡眠傾向を知ることで、ムリのない範囲で睡眠時間を割けるようになるでしょう。

身体能力

お酒をいくらでも飲める人がいれば、少し飲んだだけで顔が真っ赤になる人もいます。またいくらコーヒーを飲んでも平気な人がいれば、1杯飲むだけで胃がムカムカする人もいるものです。このような代謝能力も検査で分かります。

体質を知っておくことで、節度を守った生活が送れるようになるでしょう。

運動能力や計算速度、体臭の強さや目の色なども分かります。おもしろいのはテロメアの長さもわかる点です。一般にテロメアが長ければ長いほど寿命が長くなると言われているので、どれくらい長生きできるのかの指標になります。

祖先の情報

人類は元をたどるとアフリカで誕生した祖先に行き着きます。祖先がどのようにして日本に来たのかまで遺伝子検査で分かるのです。祖先を知ったからといって何か暮らしに影響するわけではありませんが、自分が生まれるはるか何万年も前の祖先たちが、どのような場所に住んでいてどのような暮らしをしていたのかが分かる、おもしろいデータです。

 

遺伝子検査の結果は信用できる?信憑性はあるのか

ところで「遺伝子検査の結果は本当に正しいの?」と気になる方もいるかと思います。信用できないデータなら、いくら「がんになりやすいです」と言われても対策すべきか迷ってしまうでしょう。

そもそも検査は唾液の提供だけで良いのか?

国内大手には2社ほど遺伝子検査を扱う企業があります。ひとつは「MYCODE」、株式会社DeNAライフサイエンスが提供しているサービスです。

もうひとつは「Gene Life」、ジェネシスヘルスケア株式会社というところが運営しています。創業者はDavid Baranと佐藤バラン伊里さんという、もともともは海外で発足した事業です。社外取締役に楽天の三木谷浩史さんがいるのは、ちょっと面白いですね笑
参考:https://genesis-healthcare.jp/about/

さて、両者の検査の流れをみてみると、どちらも購入後に送られてくるキッドに唾液を入れて郵送するという流れになっています。

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[2-left bg_color="#f7f7f7" title="MYCODEの検査の流れ" style="1"]

MYCODEの検査の流れ参考:https://mycode.jp/howitworks.html

[/2-left]
[2-right bg_color="#f7f7f7" title="Gene Lifeの検査の流れ" style="1"]

GeneLifeの検査の流れ参考:https://genelife.jp/guide.html

[/2-right]
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本当にだ液で良いの?血液検査の方が正確な気がするけど・・・?」という当然の疑問が浮かびますが、なぜ唾液で良いのか、MYCODEに記載がありましたのでご紹介します。

どうして唾液で検査ができるの?
遺伝子検査の試料として、なぜ唾液が使えるのか。一般的な試料として血液や、口腔の粘膜、髪の毛などが挙げられますが、試料の条件として体を大きく傷つけることなく、遺伝情報を担うDNAを豊富に含む細胞を採取できるところがポイントになります。

血液と同じくらい検査に向いていると考えられているのが唾液なのです。国際的な遺伝情報の研究でも標準的に使われることが多くなっています。一見透明な唾液ですが、多くの白血球を含んでいます。この白血球の細胞にDNAが含まれていて、遺伝子検査の解析対象になります。流動性があって、液体で均一であるところも試料として好ましいのです。
引用元:MYCODE

【参考文献】
https://cebp.aacrjournals.org/content/19/3/794.abstract

唾液でも十分にわかるなら、痛くないし手軽のなので良いですね。

だが、検査結果は100%信じ切って良いものではない

では本当に信じて良い結果なのか、という本題ですが、現段階では、正直に言うと遺伝子検査の結果を100%信用できるとは言えない状況です。遺伝子検査とは、もともとアメリカで流行していたものでした。あらかじめ自分がかかりやすい疾患や、身体能力が分かるとなるとどうしても試してみたくなるものです。

しかし現在は、なんと食品医薬品局(FDA)によって2013年に遺伝子検査による情報提供が禁止されてしまいました。

2006 年に設立された 23andMe を嚆矢とする DTC は当初、様々な病気の原因となる遺伝子異常(変異)を指摘する疾患リスクなどヘルスケア情報の提供から始まった。しかし、その後、米 FDA(食品医薬品局)から「遺伝子検査の信頼性に疑問が残る」という理由で、そうしたヘルスケア情報の提供を禁止された。

引用元:KDDI 総合研究所 R&A|米国でブームを迎える「一般消費者向け遺伝子検査サービス(DTC)」の現状と課題

なぜFDAは遺伝子検査を禁止したのか?

FDAとは日本で言うところの厚生労働省のような位置づけの管轄です。なぜFDAが遺伝子検査を禁止することになってしまったのでしょうか。

大きな理由としては、遺伝子検査の内容を本当に信頼していいものなのか分からないということが挙げられます。世の中に存在するすべての疾患が、遺伝子によって発症リスクが完全に左右されているわけではありません。検査キットによっては医師でも知らないような病名も検査対象になっていると言います。

遺伝子の影響を受けない疾患もリスクとして表示される

またほとんど遺伝子の影響を受けないような疾患も遺伝子だけの情報でリスクが表示されるため、本当に参考にして良いのかどうかも疑問が残るところです。

他にも別のサービスを使って遺伝子検査を2回行ったところ、それぞれまったく違う結果が出たという話も聞きます。遺伝子検査はいかにも正しそうに見える情報が提供されますが、このように必ずしも正確で信頼できる情報であるとは限らないのです。

参考:広がり見せる「遺伝子検査」の危ない現実

筆者は医師ですが、正直なところ「真性過眠症」は初めて聞いた病名で、調べたところ詳細は不明ですがかかる人は人口の0.1%未満のようです。この病気になる危険性が他の人より高いと言われても、なにも出来ません。うーむ、これを知ってもどうしようもないのでは、と思ってしまいます。
引用元:話題の遺伝子検査、これでは何もわからない 医者が受けて感じたこと

 

遺伝子検査にデメリットはないの?

多くの疾患リスクを知れるものの、遺伝子検査にはいくつかのデメリットも存在します。

遺伝子検査の結果によっては精神的苦痛を受ける

たとえば遺伝子検査の結果によって、精神的苦痛を受ける可能性があります。一節によると遺伝子検査の誤診率は40%に達すると言われています。

この報告によれば、(Prometheaseなど)サード・パーティ業者によって遺伝子解析された49人分のサンプル(DNAデータ)において、「何らかの病気を引き起こす遺伝子変異」と判定されたケースの40%は「擬陽性」であったという。

49人というサンプル数は科学的な調査としては非常に少ないので、この研究成果だけから「サード・パーティ業者による遺伝子解析の擬陽性率は40%に達する」と結論付けることはできない。が、少なくとも、これら業者による解析レポートは、その精度に大きな問題があることは、ほぼ間違いない。

引用元:KDDI 総合研究所 R&A|米国でブームを迎える「一般消費者向け遺伝子検査サービス(DTC)」の現状と課題

もしも大腸がんになる可能性が平均の3倍あるという結果が出たら、落ち込まない人のほうが少ないでしょう。

しかしこの検査結果が本当かどうかはわかりません。誤診率40%という数字が正しければ、60%は正解だけど40%は誤りということ。嘘か本当かどうか分からない情報に心を乱されてしまうのは精神衛生上よくありません。

もしかしたら...という意識で行動しがちに

2013年にハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーが、遺伝子検査の結果を受けて健康な乳房を切除したという話をご存知の方はいるでしょうか。アンジェリーナ・ジョリーは乳がんを実際には発症していないにもかかわらず、遺伝子検査で発症リスクが高いと結果が出たために健康な乳房を切除してしまいました。

保険を契約できない・仕事を解雇された

また遺伝子検査の結果によって思いもよらぬ差別を受けてしまうこともあります。実際に疾患を発症したわけではないのに保険を契約できなかったり、仕事を解雇されたりということが海外で実際に起こりました。

体内に鉄が過剰に増加する「遺伝性ヘモクロマトーシス」は、瀉血(しゃけつ=体内から血液の一部を抜き取る治療)などで、病気の合併症の予防が可能です。ところが、遺伝性ヘモクロマトーシスと診断された女性は、現在は健康であるにもかかわらず、明確な医学的証拠もないまま健康保険の契約を一方的に解除されました。

引用元:「遺伝子検査」で危惧される「差別」「プライバシー」の問題 | ハフポスト

個人情報が漏洩した場合は大惨事

この他に遺伝子情報の保管システムにも不安の目が向けられています。遺伝子情報とは自分でも知り得ないような膨大な量の情報を含んだ、最大の個人情報です。遺伝子検査の解析で得た情報がどのように保管されるのか、万が一企業が倒産した場合は情報をどう扱うのか。情報の管理方法にもまだまだ課題が残されています。

もしもの話ですが遺伝子情報が漏洩した場合、不安を煽って保険を契約させたり投資商品を買わせたりなどの犯罪が起きてしまう可能性も否定できません。

 

遺伝子検査の費用相場

遺伝子検査は約5,000~30,000円が相場です。価格が安いものほど検査できる項目が少なく、高いものほど多くの項目を調べられます。たとえば「GENOTYPIST」が販売している遺伝子検査キットは、アルコールの感受性のみしか調べられません。

これくらいの価格帯のものはある特定の遺伝子のみを検査するものがほとんどです。

一方で30,000円近くするマイコードやジーンクエストALLなどは、300項目以上の遺伝子を検査できます。特定の限られた情報だけを調べたいなら安いものできる限りの情報を知りたいなら高めのものを選ぶとよいでしょう。

また大きく相場を超えるものとして、子供の能力を調べる検査キットもあります。こちらは約60,000円が相場です。子供が小さなうちに学習能力や身体能力などを調べて、ムダのない教育を行うことを目的としています。

 

まとめ

遺伝子検査では、自分の体に関するあらゆる情報が分かります。疾患リスクだけでなく身長や体重、顔の大きさまで分かるのです。そのため遺伝子検査で自分のリスクを知っておくことで、疾患の予防をあらかじめ行えます。

しかし遺伝子検査の結果が必ず正しいとは言い切れません。また疾患の発症に遺伝子がほとんど関与していないものまでリスク判定されるたえめ、本当に意味があるのかを疑問視する声も挙がっています。

検査結果を100%鵜呑みにするのではなく、あくまで参考にする程度にしておくと良いでしょう。検査キットによってはお手頃価格のものもありますので、自分が知りたい情報に合わせて選んでみてください。

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