不況が続く今の日本で「高収入」というイメージの強い看護師。
特に一般的に男性と比べると年収が低い女性の職業としては比較的安定した高収入の為、人気の職業です。しかし看護師の仕事は、体力的にも精神的にもかなり厳しいといわれています。
夜勤が多い、重労働であるなど実務の点から考えると、看護師の年収は決して高くはありません。ハードな実務をこなすなら、労働量に見合った収入を得たいと考えるのは当然の事。
今の自分の状況に不満がある人は、年収アップに向けて行動を起こす事が大切です。
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看護師の全年収平均は389万円|勤務先・運営母体別で比較
看護師給与は、経営母体や地域によって大きく異なります。年収アップを目指すなら、まずは世間の相場を知っておくのが先決です。
その上で自分の置かれている環境や待遇と比較してみます。同じ条件下で自分の年収が平均を下回る場合は、確実に年収アップの方法があるといえます。
ここでは、日本看護協会が実施した調査を元に、経営母体が異なる病院別に勤続10年の非管理職の看護師の平均税込給与総額をご紹介します。
給与の中には、通勤手当、住宅手当、家族手当、夜勤手当、当直手当も含まれます。
※年収換算に関して『賞与』は考慮しておりません。
平均税込基本給与総額(円) | 年収換算 | |
全平均 | 324,171 | 3,890,054 |
国立 | 336,161 | 4,033,932 |
公立 | 332,909 | 3,994,908 |
日本赤十字社 | 347,685 | 4,172,220 |
済生会 | 326,116 | 3,913,392 |
厚生農業協同組合連合会 | 318,319 | 3,819,828 |
北海道社会事業協会 | 271,188 | 3,254,256 |
社会保険関係団体 | 339,274 | 4,071,288 |
公益社団法人・公益財団法人 | 318,919 | 3,827,028 |
私立学校法人 | 357,059 | 4,284,708 |
医療法人 (社会医療法人を含む) |
307,568 | 3,690,816 |
社会福祉法人 | 331,175 | 3,974,100 |
医療生協 | 313,534 | 3,762,408 |
会社 | 335,066 | 4,020,792 |
その他の法人 | 311,446 | 3,737,352 |
個人 | 302,752 | 3,633,024 |
無回答・不明 | 337,567 | 4,050,804 |
国立病院|平均403万円
国立病院は日本の厚生労働省が直接運営している病院や国立病院機構が運営している病院のことを言います。
平均税込給与額は33万6,161円。国立病院の特徴としては、福利厚生が手厚いことが挙げられます。国家公務員と同等の福利厚生のため、夏季休暇や年末年始の休暇が保証され、また有給休暇もしっかり取得ができるそうです。
また高度医療の現場のためスキルアップもしやすく、看護師としてキャリアアップしたい人におすすめと言えるでしょう。
公立病院|平均399万円
都道府県や市町村の自治体が運営する病院や診療所を公立病院と言います。公立病院の平均税込給与額は33万2,909円。公立病院で働く医師や看護師は公務員となります。
国や市で就業規則が決められるため、勉強会や研修に参加が必須であるなど厳しい側面も。しかし、公務員のため有給休暇や手当、昇給、賞与などの制度はしっかりしているという魅力あり。
公的医療機関(日本赤十字社)|平均417万円
公的医療機関の主な組織に日本赤十字社があります。赤十字社は世界191か国に広がる組織で、日本赤十字社はその中の一社です。日本赤十字社は日本全国に91の病院を運営。
平均税込給与額は34万7,685円。企業ブランドの安定性や、高度な医療技術、国際協力に魅力を感じて、働いている人が多いようです。
医療法人・個人|平均369万円
医療法人とは、病院、医師もしくは歯科医師が常時勤務する診療所又は介護老人保健施設を開設することを目的として、医療法の規定に基づき設立される法人です。
引用:医療法人の基礎知識
個人事業主として開業し、その後法人化して医療法人となるケースも多いようです。
医療法人・個人の平均税込給与額は30万7,568円。医療法人はこれまで紹介してきた経営母体より給与は下がります。それは医療法人にはクリニックや診療所のような比較的規模の小さい病院も多く含まれるため。
やはり規模の大きい方が給料が高くなる傾向にあります。
国立や公立など病院と比べると給料は下がりますが、自分の生活に合わせて規模を選択し、自分のペースで働くことができるところはメリットと言えるでしょう。
個人のクリニック|平均390万円
個人のクリニックで働く看護師の平均年収は390万円と、大学病院や総合病院に比べて低いです。理由は夜勤や早出などがなく、その分の手当がない事が挙げられます。
勤務時間が決まっている為、シングルマザーや主婦などが働きやすい環境ともいえます。個人のクリニックなら自宅周辺にいくつかあるはずです。その場合、通勤が楽という事も魅力の1つです。
大学病院|平均490万円
大学病院は、看護師の年収が高い事で知られています。平均年収額は看護師が働くどの職場よりも多い490万円です。
年収が多い理由は次のようなもの。
- 医療水準が高く、看護師にも高いスキルが必要
- 基本給にプラスされる手当が多い
- 夜勤や早出など勤務時間が不規則
緊急を要する手術の補助は高いスキルを持つ看護師しかできない仕事です。
多額の年収に直結するものとしては、手当が大きな割合を占めます。夜勤や早出などの手当に加えて、放射線治療などで被ばくするというリスクを伴う病棟ではその分手当がつきます。
大学病院は年収が多い半面、ハードな職場環境という事が分かります。
看護師になってから「お金ない」って一言も発したことないし思ったことないし転職する度に年収上がってるからQOLさいこー🥺 そこだけは看護師の強みだよね…どこでも何しても安定してる🙆♀️
— みりな🐼美容nurse (@mirinya_ns) September 29, 2019
総合病院|平均465万円
大学病院に続いて、看護師の年収が多いのは総合病院です。平均年収額は465万円。総合病院の中でも病床数の多い大病院の方が、年収が高い傾向にあります。
病院の規模にもよりますが、大きな病院であれば、大学病院と同等のハードな環境の可能性があります。
介護施設|平均350万円〜400万円
介護施設の場合、施設によってバラつきがあり、看護師の平均年収は350万円~400万円です。
夜勤がある施設もありますが、ほとんどが定時で帰れる事が多いのが特徴です。介護施設というと入居者たちの世話をする為、肉体労働というイメージがありますが、それは介護職の担当。
介護施設における看護師の仕事は入居者の生活支援と医療ケアのサポートで、肉体労働はほとんどありません。
また介護の現場では高齢化社会が進むにつれて、看護師のニーズも高くなります。介護施設で働いていた経験が、今後のキャリアに有利になるのです。
地域別にみた看護師の全国平均年収は375万円
看護師の平均年収は、実は地域によって差が出てきます。
平均基本給額(円) | 平均税込基本給与総額 (円) |
平均基本給額(円) | 平均税込基本給与総額 (円) |
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北海道 | 240773 | 314201 | 滋賀県 | 250449 | 333619 |
青森県 | 228199 | 289630 | 京都府 | 251141 | 329927 |
岩手県 | 244776 | 305798 | 大阪府 | 252226 | 334649 |
宮城県 | 242561 | 314275 | 兵庫県 | 251590 | 329754 |
秋田県 | 249781 | 311942 | 奈良県 | 248642 | 329386 |
山形県 | 255431 | 308034 | 和歌山県 | 251546 | 320460 |
福島県 | 233996 | 294206 | 鳥取県 | 240670 | 305130 |
茨城県 | 239503 | 324180 | 島根県 | 243758 | 311813 |
栃木県 | 250827 | 317449 | 岡山県 | 238451 | 304011 |
群馬県 | 242148 | 318347 | 広島県 | 235970 | 309622 |
埼玉県 | 254646 | 326646 | 山口県 | 230113 | 297135 |
千葉県 | 253701 | 341715 | 徳島県 | 235587 | 312421 |
東京都 | 264934 | 351464 | 香川県 | 244602 | 308513 |
神奈川県 | 258007 | 344442 | 愛媛県 | 232050 | 294753 |
新潟県 | 243732 | 307253 | 高知県 | 226291 | 285602 |
富山県 | 242993 | 306948 | 福岡県 | 229804 | 303199 |
石川県 | 241743 | 314086 | 佐賀県 | 221044 | 293037 |
福井県 | 243181 | 307659 | 長崎県 | 222664 | 288029 |
山梨県 | 248636 | 322158 | 熊本県 | 217267 | 276166 |
長野県 | 256643 | 324899 | 大分県 | 229007 | 287093 |
岐阜県 | 250269 | 324363 | 宮崎県 | 219442 | 273606 |
静岡県 | 254479 | 333909 | 鹿児島県 | 217346 | 282302 |
愛知県 | 259356 | 339624 | 沖縄県 | 228596 | 301462 |
三重県 | 255621 | 332609 | 無回答・不明 | 238617 | 318228 |
平均年収が最も高いのは東京都、全国平均の375万円を超える421万円。続いて神奈川県の413万円、千葉県の410万円など、400万円を超える都道府県が多くあります。
逆に平均年収が低いのは、宮崎県の328万円、熊本県の331万円、鹿児島県の338万円など。九州地方は看護師の平均年収が、他の地方に比べて低い傾向にあります。
正看護師と准看護師の年収差
正看護師や准看護師かによっても平均年収は異なります。准看護師についての正確な年収データはありませんでしたが、『求人ボックス』が公表しているデータによれば、正看護師の平均389万円に対して、准看護師は平均年収は355万円と30万円以上の差があるようです。
資格の有無だけでも、大きな差がある事を知っておくと年収アップを目指すモチベーション向上に繋がります。
看護師の年収は高いのか?一般社会人と比較した場合
看護師の平均年収は389万円でしたが、これは賞与を考慮していない数字ですので、もし1.5倍で年2回の賞与があった場合、約486万円〜550万円程度になるでしょう。
全職種の平均年収491万円と比較すると、それほど高収入ではありません。しかし女性の平均となると、377万円とガクンと下がります。
一方で看護師は男性が489万円、女性が477万円と若干男性の方が高いですが、格差はほとんどないのです。
看護師は女性の職業の中では年収が高いという事になります。
看護師が年収をUPさせる5つの方法
職場や地域によって年収が異なる事は分かったものの、すぐに収入の良い大学病院に転職するというのはなかなか難しいものです。
まずは今の自分の状況から、年収アップが見込める方法がないかを考えてみてください。
准看護師なら正看護師を目指す
現在、准看護師として働いているなら、正看護師を目指す事で将来確実に年収アップに繋がります。
正看護師になる為には国家試験に合格する必要がありますが、試験を受ける為の条件があります。
次のうちのいずれかの過程が必要です。
● 実務経験を7年以上積んだ後に看護師学校養成所2年(通信制)
● 中卒者は3年の実務経験または高卒認定試験合格後、看護専門学校2年(定時制は3年)
● 中卒者は3年の実務経験または高卒認定試験合格後、看護短期大学2年
准看護師として働きながら専門学校や短期大学に通うのは、時間的に難しいという人は、定時制や通信制を選択するという手もあります。
学費を払うのが経済的に厳しいなら、奨学金制度を利用するのが良い方法です。
正看護師を目指す事は将来的な年収アップにつながりますが、それまでに何年か時間がかかる事や経済的負担がある事がデメリットといえます。
専門看護師や認定看護師を目指す
専門看護師・認定看護師とは、特定の専門看護分野の知識や技術に長けている看護師の事。
大学病院で働く看護師にはこうした資格を有している人が多くいます。
正看護師と同様に認定審査を受けるには、日本看護協会が定める教育機関での単位取得や実務経験年数など、様々な条件があります。
しかし専門看護師・認定看護師として認められれば、確実にキャリアと年収アップに繋がるのです。
転職する際にも非常に有利なキャリアになる為、資格取得をして損はありません。
夜勤専従という考え方
現在の医療現場では夜勤の看護師不足が問題になっています。そこで夜勤専従=夜勤を専門にするという働き方が登場したのです。
病院に限らず、24時間看護を実施している介護施設でも働く場があります。当然、日勤よりも年収は高くなります。
また夜勤専従といっても、毎日という訳ではありません。通常、週に3日~4日ほど夜勤で働いて、残り日は休みです。
しかし夜勤専従の看護師は良い事ばかりではありません。いくら休みがあっても夜間に長時間働くのは、体力的に厳しいものです。人手の少ない夜間は看護師に任される仕事も多く、高いスキルを求められる事もしばしば。
家庭を持つ人は家族の理解も必要になります。
派遣看護師の方が儲かる?
今や一般企業だけでなく、公的機関でも派遣社員を雇用する時代です。
病院や介護施設も同じく、派遣の看護師が多くいます。
派遣というと正規雇用に比べて、将来が不安定で保障がないというデメリットがありますが、もちろんメリットもあります。
- 時給制の為、月給で換算すると正規雇用の看護師よりも収入が多い
- 自分の都合に合わせたフレキシブルな働き方ができる
- 人間関係に悩まされる事が少ない
つまり職場の事情や要求に縛られる事なく、自分軸で働けるのです。
育児中で短時間だけ働きたい人や資格取得を優先したい人が、期間限定で働くには最良の環境といえます。
条件の良い職場に転職する
将来的にスキルアップはしたいけれど、とにかく今すぐに収入をアップさせたいという場合は条件の良い職場に転職するのが最善の方法です。
世間は不況といわれていますが、看護師の資格を持っていると転職は比較的容易です。
年収UPに有利!看護師が持っておくべきスキルや資格とは
看護師の資格以外にも持っていた方が転職する際に有利になるスキルがあります。
コミュニケーションスキル
医療行為には直結しませんが、看護師にとってコミュニケーションスキルは不可欠です。
患者はもちろんの事、ドクターや上司、同僚の看護師とのコミュニケーションを円滑にできれば、仕事もしやすくなります。
医療の現場はチームプレー。
周囲との関係が良好であれば、職場満足度にも繋がります。
ケアマネージャー
高齢化社会が進む現在、注目が高まっているのがケアマネージャーです。
ケアマネージャーとは、要介護者が適切な介護サービスや支援を受けられるようにマネジメントする大切な仕事。
いわば要介護者と公的機関や介護サービス事業者との橋渡し役です。
看護師としての実務経験が通算5年以上であり、従事した日数が900日以上であれば、ケアマネージャーの資格試験を受験できます。
医療的なケアを必要とする要介護者の多い地域では、看護師としての経験が非常に役に立ちます。
介護福祉士
介護福祉士は、要介護者が快適な日常生活が送れるようサポートしたり、ヘルパーや要介護者の家族へのアドバイスを担ったりする仕事です。
受験資格を得るには、3年以上の介護業務の経験を積んだ上で介護職員実務者研修の受講が必要。
残念ながら受験資格の介護業務に看護師の仕事は含まれない為、年数はかかりますが転職に確実に有利になる資格です。
転職で失敗しないポイント6つ
多くの病院や介護施設で人手不足が叫ばれている為、看護師の求人情報は多くあります。
中には看護師専門の求人サイトまで。
せっかく転職すると決めたのですから、失敗しないよう転職における注意ポイントを挙げていきます。
求人情報を正しくチェック
求人情報には求職者が見て、魅力的な文言が多く掲載されています。ただ見て判断するのではなく、真の情報を読み取る事が必要です。
求人情報を見る上で気をつけたいポイントは、
- 給与・手当
- 勤務形態
- 休暇・休日
- 福利厚生
などが挙げられます。
特に年収をアップさせたいと考えるなら、給与・手当は重要なポイント。手当にはどんな種類があるのかをきちんと確認しておく事が大切です。
交代制のシフトの場合、申し送りの時間がサービス残業になる病院もあります。休暇・休日に関して間違えやすいのは「完全週休2日制」と「週休2日制」。
前者は毎週2日間休みがとれますが、後者は1か月に1回以上週休2日になるという意味です。つまり、月に5日しか休みがとれない可能性もあるので注意が必要です。
転職先の病院の特徴を把握して適性に合ったところを選ぶ
転職先の病院の特徴を理解して、本当に自分に合っているのかを見極める事も必要です。
まだ実務経験が浅い場合、救急外来などで緊急を要する処置が必要な時に力を発揮できない可能性もあります。
働きながらスキルアップしていきたい場合は、教育制度のある病院を選ぶのが得策です。
転職先の病院見学
面接に行く前に、転職を希望する病院を見学するのも良い方法です。病院の雰囲気や患者の数、忙しいのかどうかなど、看護師の目線で見極めてください。
転職先の口コミチェック
転職サイトによっては、その病院や施設の口コミ情報を公開しています。こうした情報を参考に、転職先が自分に合っているのかを判断します。ただし口コミを100%鵜呑みにしないよう気を付ける事です。
応募書類は魅力的に
応募書類や履歴書は書類選考をする上で大切なもの。
資格や経験を記載するのは当然ですが、志望動機や自己PRにも力を入れるのが採用への近道です。
インターネットの例文に載っているようなありきたりなものではなく、自分自身が感じた事やその病院のどこに魅力を感じたのかを、丁寧に書きます。
自己PRも同様に、これまでの経験で培った自分の強みや長所を書いてアピールするのがおすすめ。
看護師向け転職サイトの活用
転職時に転職サイトを活用する人が近年増えてきています。転職サイトのキャリアアドバイザーが転職に関するアドバイスやサポートをしてくれます。
転職を熟知したプロの手に任せるのですから、転職した後に「こんなはずではなかった」といった事もありません。
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まとめ
収入に対する不満や人間関係の悩みなどがあって「今の職場から一刻も早く転職したい!」と考えていたとしても、衝動的な退職や転職は危険です。
まずは自分が将来どういうキャリアを積みたいのか、どうやって年収をアップさせるのかを熟慮して、最善の方法をとる事です。